語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

勉強しても成績がなかなか上がらない浪人の闇【閲覧注意】

 浪人しても成績が上がるのは2割の人だけ。

 2割は上がって、6割はさほど変わらず、残り2割は下がる。

 浪人したら当然成績が上がると思ったら大間違いだ。

 

 大学受験界では、よく上のことがよく言われており定説化しています。 

 私が高校生だった10年ほど前にも言われていたことですし、それより昔や、今現在でも言われていることなので、時代を超えても通用する真理なのでしょう。

(「統計ちゃんと取ってデータに基づいて言っているの?」というツッコミをしたいところではありますが、細かい数値はさておき昔からだいたいこういう傾向があるのは事実だと思います。)

 

 私がこの話を聞いたとき、正直に言うと「え?そんだけしか上がらないの?みんなサボりすぎなんじゃない?」と思いました。

 おそらくこの記事を見ているみなさんもだいたい同じような感想を持った人が多いと思います。

 

 浪人をしたことがない人、または現役時代にさぼっていて一浪だけした人(辛らつな言い方になりますが、この手の人は元の成績がしょぼすぎるので伸びしろが有り余っている)にとって、この現象はおそらく理解不能でしょう。

 私自身、かつては、浪人すればそれだけ勉強量が増えるのだから、基本的に成績は大幅に伸びないとおかしいと思っていました。

 現役の生徒は、高校で受験に使えないような授業も受けないといけないし、部活や行事で時間を取られるので、同じ試験を受けるにあたって浪人は競争上圧倒的有利だと思っていました(現役加点制度を設けるべきじゃないかとまで思っていました)。

 

 しかし、悲しいことに、みんながみんなサボっているから思うように成績が伸びないわけではないのです。

 当初は「来年頑張ろう」、「来年は絶対合格するぞ」と思っていた人も成績が伸び悩んでしまう闇としか言えない要因が浪人の世界にはあるのです。私も司法浪人を経験することで嫌というほどその闇とその闇に飲まれてしまった可哀相な被害者を見てきました。

 以下に、その成績が思うように伸びない理由について語りたいと思います。

 

 

1.人はすぐ忘れる生き物 1年間記憶を正確に維持しないといけない

 浪人しても成績が伸びない大き要因が何といっても忘れること。

 一生懸命勉強したことでも、1年経つと記憶は曖昧になってしまい、すっかり忘れてしまうものなのです。特に難易度の高い試験というのは、「正確な」記憶・理解というのが大事であって、ここに問題が生じることが多いのです。正確な記憶がなければ、マーク式で細かい失点を増やしてしまいますし、正確な理解がないと記述式試験で上手く解答にたどり着かないという事態を招いてしまいます。


 実力を上げる勉強だけでなく、試験まで実力を維持する勉強も必要となる。つまり、浪人生は現役生に比べてさらに1年間実力維持のために勉強を余分にしないといけないのです。

 目標が高ければ高いほど、しっかり覚えておかないといけない知識は増え、理解も深いものが求められます。実力維持分だけでもかなりの勉強量が必要となるのです。

 そして、来年受からなければ、その維持分の勉強をまたやらなければいけない。浪人をすればするほど、実力を維持する期間は長くなるから、その分必要勉強時間は増える。しかも悲しいことにかなり増える。実力を維持することだけでも相当キツイのです。

 

 

2.やっていることに飽きる、気合いでなんとかできなくなる

 浪人生は既にやったことのある勉強をまたやるわけです。過去問も既に解いているのにまたやらないといけないわけです。

 勉強が死ぬほど好きでさらに自閉症スペクトラムだという人なら話は変わりますが、普通の人は同じことを何度もやるのは気が滅入ります。

 現役の時には気合いもあって何度も問題集を繰り返しとけたという人でも、もう1年同じことをやるというのは正直かなりキツイです。何度も同じことをやっていると自然と集中力は下がりますし、精神的疲弊・苦痛があまり大きくなってしまうために気合いでどうにかしようと思ってもできなくなってくるのです。

 

 浪人が決定した人は本当覚悟を持ってください。次はもうない、ここで決めると思わないとなかなか乗り越えられません。浪人の世界は強い覚悟を持っている人でも平然とつぶれていく恐ろしい世界です。

 もっとも現役時代にほとんど勉強していない人はとにかく勉強すれば成績が伸びるボーナス期間がしばらく続くので、現段階ではこういう心配はしなくていいですけどね。現段階では。

 

 

3.精神的に逃げ場がない、追い込まれてくる

 高校時代には、「この授業役に立たないし鬱陶しいなあ」とか「この行事面倒だよ」との感想を持った人も多いことでしょう。

 しかし、浪人になればそういう感想もぜいたくな悩みだったと思えて来るかもしれません。

 というのも、浪人生に行事らしい行事はないですし、ひらすら勉強が求められる立場にあり自由に遊ぶのも後ろめたい気持ちになってきます(多くの人は親などの協力で浪人できているわけですしね)。

 

 そして、高校生とか大学生とは違い社会的に立場がないとも浪人生の精神を蝕んでいきます。真面目な人ほど下のような危機感に苦しめられることでしょう(閲覧注意、トラウマを喚起するおそれがあります)。

「もし今回も駄目ならいくら頑張っても社会からはニート扱いだ」

「もう1年の浪人となると生涯年収がもっと下がる。行ける就職先が限定されてしまう。」

「志望先に受からなければ一生後悔だ。低いレベルの大学卒というのが一生つきまとう」

「同級生は今頃良い生活をして立派になっていってるんだろうなあ」

「くそう。このままでは後輩(人によっては弟妹も)に追いつかれるどころか追い抜かれてしまう」

「現役成績伸びすぎ。やっぱり元が違うのか?自分には向いていなかったのか。諦めるべきなのか。諦めたほうがいろんな人にも迷惑かけないしな。そもそも人生まで諦めたほうがいいか」

「さらにもう1年とか絶対無理だぞ。絶対失敗はできないぞ。怖い怖い怖い怖い怖い怖い」

 

 

4.頑張っても言うほど成績は伸びない そして自信がなくなり勉強を続けにくくなる 

 さきほどからちょっと話していますが、まだ勉強量が少ないころは、勉強する内容が常に新鮮で刺激があり勉強が自然とはかどりますし、理解が簡単な基本的部分すら把握していないわけですから勉強すればするほど試験に必要な知識・理解を吸収でき、点数にも反映されるものです。

 しかし、かなりの勉強量をこなしてくると、新鮮な刺激はなくなってきて単純な復習作業・確認に時間を費やさないといけなくなってくることが増えて気合いがある人でもモチベを減らされてしまうものです(退屈は人間程度の意思の強さではどうにもならないほどの強敵である)。

 また、すごく細かいところまで知識を溜めないと伸びしろがない・複雑難解なところまで理解し解けるようにならないと伸びしろがないという状況に陥ります。

 

 偏差値を60から70に上げるのにかかる時間・労力は、偏差値50から60に上げるのそれの倍以上と言われるのもそれが理由です。頑張れば頑張るほど成績が伸びるために、必然と伸びが緩やかになってしまうのです。

 努力してもそれが反映されないというのは本当苦痛であり、自分自身の能力や素質に疑いをもって勉強が手につかなくなる人もいます(受験すると決めた以上は、試験が終わるまでは素質の話を考えるのは辞めましょう。)。悩めば悩むほど時間はなくなり、勉強できなかったと自分が許せなくなるというのにです。

 

 

 まだまだ書けることはあるのですが、長文になってしまったので、今回はこのへんで。

 浪人生が成績で伸び悩むのは、覚せい剤の常習犯が覚せい剤がやめられないと悩むのと似たところがあって、人の意思では容易に解決しがたい類型の問題があるのです。

 「意思が強いから自分は大丈夫」という非常に危険ですよ。本当。

  先輩の自慢話はスルーでいいですが、先人のありがたい失敗談は素直に聞いとくのが無難ですからね。失敗は成功の元とか母とか言いますが、その失敗は自分自身で行う必要はないのです。他人の失敗を自分の成功のために利用すればよいのです。