語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

全人格労働とモーレツ社員

 最近、新しく耳にするようになった言葉として「全人格労働」という言葉があります。

 意味合いとしては、「労働者の全人生や全人格を業務に投入する働き方」のことを言うようで、産業医の阿部眞雄さんが著書『快適職場のつくり方』の中で述べた概念のことのようです。

仕事で私が壊れる 人生を搾取する「全人格労働」 - Yahoo!ニュース

 

 

 全人格労働という言葉はさておき、確かにこの手の働き方が現在では多くの労働者に強く求められているところがあります。

 しかし、昔にも似たような概念がありましたね。 

 

 そうです。モーレツ社員(死語)です。

 会社のために全精力を使い、プライベートなど顧みない。会社のために自分の人生全てを捧げる。

 働き方でいえば、全人格労働も、昔でいうモーレツ社員とあまり変わりはない気がしますね。

 しかし、悲しいことに、現在の全人格労働は、かつてのモーレツ社員の働き方よりもさらにひどくなっているところがいくつかあるのです。

 

 

・簡単に捨てられる
 かつてのモーレツ社員は、労働者が会社に忠誠を誓う代償として、会社が最後まで面倒を見てくれました。

 リストラという言葉が流行る前の時代ですし、会社は終身雇用を謳い、労働者の人生を保障する。

 それだからこそ、労働者は、会社に忠誠を誓い、自分の人生を会社にささげたのです。


 しかし、今は、そのようなギブアンドテイクの関係はありません。

 景気が良くてバリバリ仕事ができるうちはちゃんと給料をくれますが、業績が悪化したり、少し病気で働けなくなったりすると、クビが危うくなります。

 今でも会社は労働者に忠誠を誓えとは言いますが、最後まで面倒は見てくれないのです。終身雇用は保障されません。会社の都合が悪くなれば、労働者にはリストラの恐怖が付きまといます。

 


・競争が激しくなった、思うように稼げなくなった
 かつてのような人口ボーナスは日本にもうないですし、今は日本や一部の先進国の企業だけでなく世界の企業が相手です。

 韓国の会社が世界トップクラスになり日本企業は惨敗、台湾の会社が日本の有名企業を買収するなんて昭和のころは考えられなかったことでしょう。

 

 世界レベルでの激しい競争になった現在では、昔のように頑張れば頑張るほど成果が出ることが多いという時代は終わりました。
 頑張った分が成果にすぐ出るなら人は頑張れますし、対価として十分な収入を得ることができました。
 しかし、なかなか成果に出ず、頑張っても徒労に終わることも多い。それでも競争に勝つには頑張り続けるしかない。同じ労働時間でも成果が出るのと出ないのとでは、苦しさが違いますし、得られる対価の額が違います。死ぬほど頑張っても十分な対価が得られないとか悲しすぎます。

 


・家庭をほったらかしにできない
 今はしっかり教育しないと子供が良い職にありつくのは難しいです。就職では大卒がスタンダードと化していますし、大学に行くだけではスタートラインに立っただけです。それに日本企業の力は弱まっていますし、これからさらに機械化で職は減っていくでしょう。

 昔のように夫は仕事、妻は家庭。夫は子供をほったらかしでいいというわけにはいきません。「男は子供なんてほったらかしでよい」、「大学に入れてさえしまえばよい」ということは、景気のよかった時代でしか通用しません。今の時代は、子供の教育をちゃんとする必要があります。子供ほったらかし、家庭ほったらかしがはもう許されないのです。

 

 それに、今はその気になれば女でも何とか稼げる時代になってきています。

 離婚件数は30年前とかと比べるとだいぶ増えています(今の20代も10年後はどうなっているかわからないし、今の20代世代とかとんでもない高い数値が出そうで楽しみ)し、離婚の心理的障害は小さくなっています。

 モーレツ社員のころは、女性が社会的に自立しづらかったので、家庭を顧みなくても離婚されませんでした。しかし、現在同じことをしたらまあ三下り半をつきつけられるでしょう。

 ただでさえ健康を害するリスクなど様々なリスクが高いのに、それに加えてプライベートが完全崩壊するリスクも高いです。

 

 

 ここまでいろいろ述べてきましたが、一応、平均労働時間だけ見れば、昭和の最後ごろに比べ年間250時間ほど減っています(土曜日休みのところが増えましたし、仕事が減り稼ぎが減っているというのもあるでしょう。)。

 その点はモーレツ社員よりマシでしょうね。

 

 しかし、あくまで平均の話で、男性労働者の2割は残業時間が40時間を超えると言われていますし、100時間を超える人も5%近くいたりします。

40代男性の残業時間に「格差」。 月20時間以下が多い一方で100時間以上の人も|タブロイド|オトコをアゲるスマホニュース

 昔のように終身雇用が保障されていない、十分な対価がもらえるとも限らないのに、プライベートと健康が崩壊してしまうリスクを負って働き続けなければいけない。

 本当やってられませんね。よし。私は(こんな心身に問題をきたすような非人間的な働き方では)働かないぞ。私が一抜けだ。