池袋受験生発狂30分中断事件に見る司法試験の闇
去年の司法試験では、憲法の問題漏えい問題が大きな話題となりました。
残念ながら、今年の司法試験も無事には終わらなかったようで、今年は何といっても池袋会場で起きた受験生発狂事件が話題となっています。
司法試験中に精神に異常をきたした人が発生 - はてな匿名ダイアリー
【司法試験】池袋会場で発生した不公正な差別的取り扱いについて - 1463057793 - LSC:法科大学院・司法試験総合情報センター(LS情報館)
私が最初、はてなダイアリーを見たときは、いわゆる釣り記事(嘘っぱちの内容でアクセスを誘う記事)かと思いましたが、どうやらデマではなく本当に起きた事件のようです。
この事件は、受験生が発狂するほど司法試験の負担が大きいという意味で、司法試験の闇の深さを嫌でも思い知らされる事件です。
しかし、それだけでなく、二重、三重の意味で闇が深い事件なので、そのことについて語りたいと思います。
1.危機管理マニュアルが作られていないor実行できていない 想定が甘すぎる
司法試験は、試験時間が長く、内容も難しく、日本の数ある試験の中でも特に負担が大きい試験です。
特に1日目は合計7時間、2日目は合計6時間、受験生は頭をフル回転させて問題を解くわけですから、疲労や負担は非常に大きいものとなっています。
受験生は例年8000人はいますし、これだけの数の人がこれだけ負担の重い試験を受ければ、誰かが倒れてもおかしくないわけです。
そのため、誰かが倒れたときのために速やかに対応するマニュアルが作られて、その通りに事を運ぶ必要があるわけです。しかし、実際には対応がうまくいかず30分も時間がかかったわけですから、誰かが倒れるとの想定がされていなかったか準備ができていなかったということですね。
さっさと病人を別室に運べば5分程度の中断で済んだはずですし、なぜ30分もかかったんだという話ですね。
2.公平性が守られるのか
はてなダイアリーで日記を投稿した人と現地の人の情報によると、「法文を閉じろ」というアナウンスはすぐにあったものの、「問題文を閉じろ」という指示が出るまでは少し時間があったようですし、その問題文を閉じろとの指示も徹底されていなかったようです。
新司法試験は問題文が非常に長く、書くべき事項も被所に多いため、時間との勝負という側面が強くなっています。時間勝負の試験で、30分も時間がプラスならアドバンテージは極めて大きいです。
論点外しみたいな重大ミスはまず防げるし、何よりあてはめが充実できる。「的確に問題文の事実を拾ってそれに法的評価を加える」という新司法試験で得点をとるために重要なことを、余裕をもってすることができます。
60分以上たってからの中断ということなので、特に設問ごとに考える時間を取る人にとっては、設問2(2)、3を充実させられたのではないでしょうか。
25分間は問題用紙を閉じなきゃいけなかったとしても、頭の中でどう論述するかの構想はじっくり練られますし、30分の追加はあまりに大きいです。
ただ、逆に時間が経ったせいでしっかり構想を練っていたのに、書くべきことを忘れてしまった人もいるでしょうし、一概に有利に働いたわけでもないというのが厄介なところです。
3.公式発表がない
これだけの重大事故があり、受験生の公平性を揺るがす事態が起きているにもかかわらず、法務局は特にこの件についてアナウンスを出していません。もしかしてこのまま闇に葬るつもりなのでしょうか。
司法試験は合格者の数がある程度決められており、池袋会場の受験生300人が受験上有利になり、そのせいで他の会場の受験生が何十何百の受験生が不合格になることも当然ありえます。
司法試験は弁護士だけでなく、裁判官や検察官になるためにも必要な試験です。将来裁判官や検察官という国の重要な機関で絶大な権力を行使することになるかもしれない者を、いい加減で不公平な試験で選んでよいわけがありません。
国の基盤となる組織の一員となるものを選ぶ試験で、大きく公平性が失われた事態が起きているのに、しっかりアナウンスをしていないというのはありえないことです。
危機管理がボロボロで、公平性は失われ、説明責任も果たさない。この事件は、三重の意味でダメなところがありますね。
一律にある会場の受験生が得をしたのなら、その会場の受験生の点数を下げるという処置も考えられますが、損した人も中にはいますし、一律に点数を減らすわけにもいかないでしょう。
ってことで、ここは合格者300人増で手を打ちませんか。それでみんながハッピーになれるでしょう(?)。落ちた人も2100人にも入れなかった自分が悪いと納得できるでしょうし。
もしこの事件について特に対応がなされず、黙殺されたまま合格者が去年同様の約1800人になったとしたら、法務省に火炎瓶投げる輩が出てきますよ。
4か月後、「火炎瓶投げたの私だ」との記事を投稿する私の姿が見られるかもしれない!