語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

予備校はあなたの人生がくるっても何らの責任も持たない 社会人は司法試験を目指すのをやめよう

 10年前あれだけ人気を集めた法科大学院は、1年500人もの規模で入学者が減っている状態が続き、今や閉鎖に追い込まれたローが何校になったのか数えるのが面倒になるほどまで人気が落ちぶれてしまった。

 今現在では、定員割れが当たり前のようになっている。ほぼ定員を満たすのは、一部の有名ローぐらいなものだ。

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 合格率が低く弁護士の平均収入がガタ落ちした状況で、高額の授業料が必要なロースクールはもはやオワコンになってしまったのである(しかも授業のクオリティが高くないことが多い。)。

 

 その代わりに、もてはやされるようになったのが予備試験ルートである。

 何といっても、このルートであれば、会社等を辞める必要がなく、高額の授業料を支払わなくて済む。

 リスクとコストが低いという魅力から、予備試験経由で合格を目指す人が増え、各予備校も「予備試験から受かる」をうたい文句にし始めたわけである。

 5年ほど前からかなりその傾向が強まってきたが、今は予備試験受験者の方が法科大学院受験者より多くなっており、「予備試験経由で合格しよう」というのが主流ルートになっている。

 

 

 しかし、後述するが、予備試験経由で合格するというのはかなりの難関であるし、ましてや社会人で合格しようとするのはとんでもなく困難なことである。

 そこで今回は、「予備試験経由で合格しよう」という風潮に安易に従うのはまずすぎるという話をしたいと思う。

 

 

○予備試験で合格しているのはほんの少しの人しかいない

 現行制度では、予備試験に合格するか、法科大学院を修了しない限り、司法試験を受験することすらできない。

 その予備試験であるが、平成27年度のデータだと、出願者12,543人(受験者10,334人)に対し、最終合格者はたったの394人である。

 しかもそのうち156人が大学生で137人が法科大学院生である。そして35人は無職である。

法務省:平成27年司法試験予備試験口述試験(最終)結果

 

 つまり、社会人で合格している人はほとんどいない。大学生・法科大学院生以外が6000人ほど受験しているというのにだ。

 結局、合格しているのは、「ローもいいけど、できればローに入学or修了する前に司法試験に合格したい」「予備試験で受験資格を得た上で司法試験に受かりたい」という人がほとんどなわけである。

 「予備試験に合格しなかったら仕方なくロー」という大学生は多いし、ロースクールと無関係で合格している人なんてほとんどいない。純粋に社会人をやりながら合格する人はほとんどいないのである。

 

 しかも、本番の司法試験の合格率も社会人は低い。せっかく予備試験と潜り抜けても、本試験に合格するのは(東大などの)大学生と法科大学院生なのである。

 私が不合格になった27年度本試験のデータでいうと、公務員は35人中14人、会社員は31人中12人しか合格していない。法科大学院生が89人中76人、大学生が57人中51人合格しているのと比べる雲泥の差だ。

法務省:平成27年司法試験の結果について

 

 結局これが現実であり、現在でも司法試験に合格することは並大抵のことではないのである。予備試験に受かっているのは、旧司時代でもすんなり早期で合格した可能性が高いだろうとびぬけた大学生・ロー生たちばかりだ。

 大学、法科大学院で6年、7年勉強した人でもすんなりと合格できていない人が多いので当たり前と言えば当たり前なのだが、予備試験経由でも当然すんなりと本試験合格まで行くわけがないのだ。

 ましてや社会人がすんなり受かるような試験ではない。というかほとんど社会人合格者はいない。

 データを見ると、予備校が言う「社会人でも予備試験から司法試験合格」は夢物語だとはっきりわかるだろう。

 

 

○ただでさえ勉強がキツイ

 有名大学の出身者が多く、気力も体力も知力も優れた法科大学院の生徒ですら、普段の司法試験の勉強で散々苦しんでおり、ドロップアウトする人間が大量に出ている。

 それなのに、冷静に考えて、最低でも8時間ほど勉強時間が削られ、労働で失われた体力・気力を回復する時間をとらないといけない社会人がまともに勉強するなんてまず無理である。

 働きながらでもしっかり勉強をこなせる非常に優れた体力と気力があり、勉強時間が少なくても済むだけの非常に優れた素質・適性・集中力・記憶力がある(又は今まで勉強してきた蓄えがある)人でないと、フルタイムで働きながら合格するのは極めて難しいだろう。

 

 私も一時期は社会人受験生になっていましたが、働きながら司法試験に受かろうなんて過労死しますよ。運よく死ななくても、過労鬱には余裕でなれると思います。

 

 

○予備校はいつの時代も無責任に宣伝する

 そもそも、予備校は宣伝文句であることないことを平気でいうものだ。

 東大生でも合格率が10%なかった時代でも、有名大学の学生にガンガン勧誘していた。合格率がとんでもなく低く、有名大学の学生のほとんどが屍になっていた時代でも、「君の実力ならちゃんと予備校で対策を練れば合格できる」と言っていたのが予備校である。

 

 そして、新司法試験時代になれば、「司法試験はめちゃくちゃ簡単になった。」「新司法試験なら昔と違って頑張ればちゃんと合格できる」「ロー経由で早期合格・一発合格」と言い始めた。

 確かに合格者が一気に増えたおかげである程度は合格しやすくなったが、それでも結局司法試験は難しいままで(長文化が著しく、問題の難易度自体はむしろ上がっている)、結局合格は厳しい道のりのままであってもそんなことはお構いなしだった。

 

 そして5年ほど前から、今度は「予備試験経由こそが最適ルートだ」「社会人をやりながらでも合格できる」と言い始めた。

 しかし、予備試験経由で司法試験合格できる人どれだけいるんですか。ましてや社会人受験生で合格する人どれだけいるんですかという話だ。

 

 

 結局、データを見ると、「ローを目指しつつor通いつつ予備試験も狙う」、「大学に入ってから司法試験に合格するまでバリバリ社会人として働かない」というルート以外はほとんどうまくいっていない。

 

 受講生が何度も試験に落ち、撤退を余儀なくされたとしても、予備校は平然と新しい受講生を探し出す。幾多もの屍には触れることなく、調子のよいことばかりを言って、受講生をまた探し出す。

 予備校のうたい文句に耳を傾けてはいけないのだ。