今の時代でも法学部はお勧めできるのか
法科大学院制度の失敗のせいで、一時期法学部人気はだいぶ下がりました。5年ほど前には、日本の文系最高峰である東大法学部が進振りで人が集まらず、定員割れするという衝撃の現象が起きたぐらいです。
5,6年前にはだいぶオワコン、不人気になったと言われた法学部ですが、果たして現在、法学部は受験生にお勧めできるのでしょうか。
法学部出身の私の見解を書きたいと思います。
<就職面>
まずは多くの人が気になっている就職面ですが、だいたい以下のことが言えると思います。
・民間受けは良い方
昔から「法学部はつぶしがきく」と言われていて評価は高かったが、ある程度は実学である法律について知識があるということもあり、現在でも文系学部の中では評価が高い部類に入る。
(個人的には、司法試験を目指していた層でもない限り、学部を出ただけの人の法的知識・理解を信用してならないと思っていますが。)
就職率は悪いじゃないかという声もあるだろうが、法学部の場合、公務員浪人や法科大学院進学者の存在によって就職率は悪く出がちなだけなので気にする必要はない。
就職の心配皆無な医学部や、工学部の引手数多な学科などと比べると見劣りするが、文系学部では経済学部や経営学部、商学部などと並んで民間受けは良い方だろう。
・公務員を目指しやすい
公務員試験では、憲法民法辺りは必須であることが多いし、行政法や刑法なども科目になることが多い。
法学部では講義で憲法や民法を学習するので、大学での講義科目で公務員試験の学習も兼ねることができる。
そのため、実際、公務員になるのは法学部出身者が多い。
公務員という観点では、ミクロ経済や財政学なども出題されるところがあるので、経済学部などでもダメというわけではないのだが、やはり科目的に法学部が一番公務員試験には向いている。
とりあえず公務員を志望しているのであれば、科目的に法学部が一番無難なのである。
・資格を取りやすい
会社に縛られ、会社の依存する人生はやはりしんどいし、独立して働きたい人は少なくないだろう。
そう考えると、弁護士等の法曹や、司法書士、行政書士といった資格に直結した学習を講義で行っている法学部は魅力的である。
それに今の時代、有名企業であっても安泰とは限らないし、いつ会社を首になってもおかしくないので、すぐに独立するわけではないとしてもリスク管理として、何らかの資格を取得することが望ましい。
そう考えると、行政書士あたりは保険として取れればよいし、そこまで行かなくても宅建は取っておきたいということになるので、やはり資格試験の勉強に適した法学部は魅力的である。
(実際には、法科大学院を目指す人以外で行政書士合格は非常に難しいと思います。だいたい学生中に行政書士に受かっているのは司法試験を受ける層です。)
<勉強面>
・勉強しやすい環境がある
法学部は文系学部の中では偏差値が高く、真面目な人の割合も多いので、講義中に騒ぎだすような学生は他学部より少ない方である。
ある程度のレベルの大学であれば、法科大学院・予備試験狙いの人が多いだろうし、そうでなくても公務員志望の人が多いので、勉強したい人はそういう人たちと仲良くなって、切磋琢磨するとよいと思う。
経済学部・経営学部などはやはり法学部と比べると、ガッツリ勉強する人の割合は少ないし、勉強したいけど周囲に流されてすぐ遊んでしまうような人は法学部の方がよいかもしれない。
・期末試験は難しめ
経済学部・経営学部など他の学部では、真面目に授業さえ出ていれば単位が取れないということはあまりなく、比較的優も取りやすい。
しかし、法学部は、そもそも法律学自体が難解であるし、他学部よりまじめに勉強する人の割合も多い傾向にある。それに卒業論文を課さない分普段の講義が厳しくなっているところがあるので、単位は取りづらいし、優も取りにくい。
そのため、大学に入ったのだからとにかく遊びたいという人は危険である。
とはいえ、単位取得がそこまで難しくない講義はあるものだし、油断しすぎなければ卒業が困難になるほどではない。
それに、単位取得難易度が高い、4年で卒業できない人が多いのは、一部の有名大学だけであるという声も多いので、そこまでビビる必要はないだろう。
(留年率が高いと言われる京大法学部でも、かつてのように留年しつつ司法試験合格を目指す人が減ったこともあり、現在では下のリンクにあるように1割5分程度しか留年していない。神戸大学でも、リーマンショック直撃世代ですら8割以上は4年で卒業できていた記憶があるし、阪大は受講講義制限制度であるキャップ制がない分、留年率自体は高くない…はず。)
・論理的思考を身に着けられる
世間では、理系=論理的のような考えをする人が多いが、自然科学は客観的な法則を論理を用いて見つけ出すのに対し(自分で書いておいてなんだけど、ホンマかいな)、社会科学はいかに論理を用いてある見解が合理的であるかを説得できるかを追求するものであり、どちらもロジックは極めて重要である。
むしろ、法律学はガチガチの論理の世界であり、とにかく理屈が通らないと問題外とされてしまう学問である。数学に並んでとにかく論理がものをいう世界であり、論理的思考が強く求められる。法学部ほど論理を重んじるのは、それこそ数学科ぐらいというほどのレベルである。
そう聞くと恐れおののく人も多いだろうが、なんだかんだで卒業はさせてくれるのでその点は数学科と違って闇は深くない(法科大学院まで行くと数学科並に闇が深いけどね。)。
論理をこねくり回しいかに人を説得できるかを追求することができるし、その過程で社会生活や仕事をする上で存分に役立つだろう論理的思考を身に着けられる。
そのため、物事をじっくり考えるのが好きな人には向いているし、人をいかに説得するか・上手く適切な説明をするかの技術を磨けるところがあるので、実学という観点でも工学部などの理系ほどではないが役に立つところが多いのではないかと思われる。
<学内環境面>
・合コンできないわけではないが…
法学部でもゼミは多いし、男女比に大きな偏りもないため、合コンしたいと思えば十分にできるだろう。
しかし、どこの大学も法学部は男女ともに地味な人の割合が多いし、経済学部などと比べると合コンや遊びに積極的な雰囲気はないので、とにかく遊びたい・合コンしたいという人は経済学部などの方が向いているだろう。
・男女比はそれほど差がない
さすがに京大ともなると、あの数学をできなければならないため男女比が73:27になるが、大阪大学では57:43、神戸大学では65:35、大阪市大では64:36なので(passnavi.調べ)、そこまで大きな偏りはない。
だいたい男女比が6:4程度で収まる大学が多いし、工学部などとは違って男だらけみたいなことはない。
そのため、「男だらけの環境はもうまっぴらごめんだ」という人は勿論、「女同士の関係ばかりは疲れる。ほどよく女友達を見つけつつ、いい男を見つけたい」みたいな人にも悪くないだろう。
もっとも、理系や、文学部、医学部保健学科以外はだいたい男女比に大きな偏りはないと思うので、他の社会科学系と状況に差はほぼないだろうが(社会学部辺りもやや女割合が多いぐらいかな。)。
・学内でコンプレックスをもちにくい
50年前ほどの日本の景気がイケイケだった時代は、法学部より経済・経営学部が人気だったようだが、今ではなんだかんだでいっても文系の中で法学部の偏差値が最も高くなっているので、学部間のヒエラルキーは上である。
医学部以外には引け目を感じる必要がないので、コンプレックスを抱きにくくて済むというメリットはある。
以上のことを踏まえると、割と法学部はお勧めできる方だと思います。
合う合わないがあるので誰にでもお勧めできるわけではありませんが、少なくても、文系の中では就職の面も優れている方ですし、迷ったらとりあえずつぶしがきく法学部を選んでも良いと思います。
ちなみに去年や今年を見ていると、公務員人気もあって、法学部の人気は持ち直しており、不人気・オワコン化は改善の傾向が見えています。
http://www.keinet.ne.jp/topics/15/20160223.pdf
http://www.keinet.ne.jp/gl/15/04/toku_1504.pdf
受験生はその時代の趨勢で学部を選びがちなので、やはり就職に強い社会科学系はなんだかんだで人気を保てるのでしょう。まあ、理系にまで目を向けると、結局医学部一強なんですがね。