語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

ごく一部の例外を見て「自分もできる」「我が子もできる」と安易に思ってはいけない

 世の中には、「MARCHは2週間で受かる」、「早慶も3か月あれば余裕よ」みたいな妄言を吐く人がたまにいます。

 それに、そこまで極端ではなくても「ガチれば東大も司法試験も余裕。環境も才能も不要」、「塾なんか行かなくても東大に行った人はいるし、塾なんて金のかかるものに行くな」、「偏差値30からでも慶応に行った人がいるし、1年もあればいけるやろ」みたいな「まず無理だぞ」と言いたくなる話を信用して、合理的根拠なく自分や我が子もできると思い込む人がいます。

 

 ちゃんと周りの上手くいった人たちを見て、自分自身が努力していれば「まず無理なことを言っている」、「そういう人がいないわけではないがごく一部の恵まれた人にすぎない」ということがすぐわかるはずなのですが、受験生にも親御さんにも上のような話を受け入れてしまう人が割と少なくありません。

 そこで、今回はごく一部の例外を見て決断をしてはならないという話をしたいと思います。

 

 

1.上のような話が話題になる理由

 少し前に、偏差値30から慶応に行ったビリギャルが話題になりましたが、この手の「まず無理だぞ」という話が話題になるのは、レアケースな成功例だからです。

 「これだけ頑張ったんだから当然この大学ぐらい受かるよ」なんて話は当たり前すぎますし、世の中にありふれているためニュースバリューがないのです。

 

 つまり、実際には後者のケースが一般的で、前者のケースなんてまず存在しないという場合であっても、話題になるのは前者なのです。

 凄いレアケースで、多くの人が驚き、「自分や子供もやれるんだ!」と甘い話を信じさせてくれる前者の話ばかりが話題になるため、あたかも前者の話も結構世の中にはあるんじゃないかと錯覚してしまうのです。

 

 現実には、偏差値30から1年とかで慶応なんてまず無理ですし(勿論できないとは言いません)、極めてレアケースの前者を信用してはいけないのです。ちゃんと高校2年生1年生や中学生のときから真面目に頑張らないと普通は無理という事実をしっかり受け止めるべきです。

 

 

2.凄い話には裏がある

 あと、ビリギャルの話がでましたが、あれは有名な高校出身みたいですし、元々は真面目に勉強していたしある程度受験に関する素質もあったという前提を見逃してはいけません。

 「3か月で宮廷!」みたいな人も現実にいないわけではないですが、だいたいそういう人は超有名進学校出身でたまたま燻っていたにすぎなかったりします。元々基礎はできている上、ずば抜けた記憶力があってさらに超人的な努力をできる人だったというのが真相だったりするわけです。

 

 あと、商品は売れてなんぼなので、話を盛っている可能性も非常に高いです。

 本当は普段偏差値65ぐらいとれていたのに、たまたま有名進学校の校内模試で偏差値30を取ったのを利用して「偏差値30から○○へ」ということだってできますし、本当は昔からコツコツ勉強していたのにサボっていたことにして「半年で○○へ」ということだって十分可能でしょう。

 私だって「部活一筋だったのにインターハイに出られなかった悔しさをバネに8か月で神戸大学へ」みたいなことを言うことだってできるわけです。実際には部活引退前から京大でB判定を出していたとしてもその事実は隠してしまえばいいのです。ねつ造なんて簡単です。

 セールストークを真に受けてはいけませんし、人の話は鵜呑みにしてはいけません。

 

 

3.真実を知るために統計を見よ

 司法試験の予備試験に関してよく言っていますが、予備校などが謳い文句にし世間でも注目されていることが実際にはほぼありあえないことだってあります。

 

 例えば、その予備試験ですが、予備校がよく言っている「社会人でも司法試験に合格」なんてことは統計を見るとほとんど存在せず、夢物語にすぎないことがわかります。予備試験受験者のうち6000人ほどは学生以外と思われますが、そのうち最終的に合格したのは公務員14人、会社員12人だけです(平成27年度)。

 その26人も元々学生時代にめちゃくちゃ勉強していたり、とびぬけた記憶力と集中力を持っていたりする可能性が高いでしょうし、そこそこ優秀程度ではまず社会人で司法試験に受かるなんてありえないというのが事実だとわかります。

 

 ちゃんと統計を見たうえで、「こういう人がそこそこいるのか」、「この話はごくごく一部に過ぎないのではないか」ということを確認するべきでしょう。

 

 

4.スタンダードを意識すべき

 自分や子どもがごく一部の例外であれば妄言的な話を受け入れても問題ないのですが、そんなごく一部の例外は1億2千万人以上もいる日本でほんの一握りです。自分や子供がそのごく一部の例外であると安易に考えるのは危険です。

 ごく一部の天才や豪運の持ち主ではない可能性の方が圧倒的に高いわけですから、その業界の定説に従った行動をとることを意識するのが無難です。

 

 例えば、有名大学に行きたいのであれば、多くの人は中学時代やその前の小学校時代から真面目に勉強し続けているわけです。できる限り中学受験をして、自称ではない進学校に行き、予備校で優れた講義をしっかり聞きつつ、真面目かつガツガツ勉強を継続するべきでしょう。

 

 甲子園に行きたいのであれば、リトルリーグ時代から練習を重ね、有名なリトルリーグ、シニアリーグ等のチームに移籍し、甲子園によく出ている高校からスカウトされ、なおかつその高校で必死に練習するべきだと思います。

 「ワイは無名府立高校を自分の力で甲子園に導くんや。ワイの力で大阪代表になるんや」みたいなことを思う人もいるでしょうが、それを実現できたのは四半世紀で中村紀洋氏ぐらいです。そう、15年ほど前に世間をにぎわせた「金髪のノリ」です(古い)。ノリさんみたいな野球界のレジェンド級の人はとてもじゃないですがまともに参考にしてはいけません。

 

 

5.さいごに

 余談ですが、漫画やドラマやアニメなどでは、東大卒だとか世界トップクラスの選手みたいな人がごごろごろ出てくるので、フィクションと現実の区別がつかなくなって、「こんな人でも成功するんだ」、「こんな環境、こんな期間でも成功するんだ」と思っている人が結構いるんじゃないかと思います。

 例えば、金田一少年の事件簿なんて、主人公自身がIQ180もあって、東大卒が息を吸うように出てきますからね。「作者は大学が東大しかないものと誤認しているんじゃないか」と突っ込みたくなるレベルです。

 

 安易に自分もできない、子どももできないと思い込むよりは遥かにましかもしれませんが、「ちゃんとした環境でちゃんとした努力を長期間継続しないと、難易度の高いことで成功はしない」、「有名大学にも甲子園にもまず行けない」と強く意識するべきだと思います。

 一応、甲子園については競争の激しくない地域でぱっと公立校が出ることもありますが、野球で有名でない公立校が全国にどれだけあるんだという話です。全体で見ればどれだけの低い成功率なのか考えるべきです。

 

 

 今回の記事に似たような忠告を聞きたいという方は過去記事もご覧ください。