語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

偏差値60からの世界は険しく、65辺りは魔境だったという話

 「ガチれば東大?まず無理やで。小学校中学校でのしっかりとした下積みがあった上で、高校でしっかり努力し続けたらチャンスがある」みたいな夢のない話ばかりする私ですが、今回は自分語りをしつつ、「偏差値60からの上積みは特にキツイぞ!」という話をしたいと思います。

(なお、偏差値基準は河合塾にします。進研だと70から、駿台だと55ぐらいから延ばすのがキツイということになります。)

 

 

1.偏差値60ぐらいまではボーナスステージ

 偏差値は低ければ低いほど上げるのは簡単です。少し勉強しただけでも点は増えますし、同じ偏差値にいる人たちは真面目に勉強していない人が多いので、自分が少し勉強しただけでも追い抜くことができます。

 わからない分野があってもしばらく放っておいて得意な部分でしっかり点を稼ぐこともできますし、ミスが少々多くてもそこまで問題にはなりません。

 

 偏差値40の人が50まで行くには勿論ある程度の勉強量が必要なのですが、そこまでの量ではないですし、60ぐらいまでは勉強すればするほど伸びていき、成長の実感をよく感じられるものです。

 いわば60ぐらいまではやればやるだけ伸びやすく、楽しんで勉強しやすいボーナスステージなのです。

(勿論個人差があるので、凄く記憶力の良いなど受験の素質がある人は65ぐらいまでそうかもしれません。私の弟はそのパターンです。逆に「60までボーナスとかしばくぞおら!」という方も残念ながら少なくないと思います。)。

 

 

2.そこからさらに上げていくのは魔境

 しかし、偏差値60ぐらい、いわゆる旧帝大の北大等々のボーダーが入ってくる段階ともなると、そう簡単には偏差値が上がりません。1上げるだけでも相当な労力がかかるようになってきます。

 

 それもそのはずで、それぐらいのレベルともなると、自分と同じかそれ以上の偏差値の人は、だいたい大学受験に人生をかけているような人たちばかりになってくるのです。みんなが全力かそれに近い力を出してくるのです。そういう人たちを追い抜かなくレベルにならないといけなくなるのです。

 偏差値50ぐらいなら出せる力の10%ぐらいしか出していないような人が多いのに対し、60を超えてくると出せる力の70%や80%ぐらいを出す人が増えますし、65付近ともなるとそもそも出せる力の総量がすごいのに常に80%や90%の力を出し続けるような人が多くなるのです。それこそ私のように全力を超えて120%ぐらい自分の力を使い果たしている人までいます(決してマネしてはいけません。あと数値はあくまでイメージです。)。

 そういう人たちがライバルなわけですから、なかなか相対評価で上に行くことはできなくなってきます。

 

 それに偏差値60を超えてくると、だいたい頻出の問題や基本問題はおおむね解けているわけですし、さらに上積みをしようと思えば出題頻度の低い問題、難易度の高い問題にも挑戦しなければいけなくなります。そして、とにかくミスを減らしていかなければなりません。

 

 頻出問題や基本問題は点に直結しやすく、コストパフォーマンスがよいわけですが、コスパが悪い部分も取りにいかないといけなくなりますし、難解な問題に挑戦することになるため労力も凄くかかります。

 そして、人の理解力には限界があるので、とんでもない難解な問題はいつまで経っても思うように解けないという事態に陥りやすいですし、注意力にも限界があるのでどうしても常人は一定数のミスが出てしまいます。

 その中でも、少しずつできることを増やしていき、少しずつミスを減らし、地道に少しずつ実力を上げていかないといけないのです。

 そんなわけでなかなか結果が出なくなってくるのも当然です。偏差値40みたいにポンと一気に点数を稼ぎやすい世界とはわけが違うのです。

 

 

3.自分との闘いも強いられる

 なかなか努力が成果に表れにくくなる中、それでも努力を重ねなければ実力は上がりません(むしろ下がる)。結果が出なくても頑張り続けないといけないのです。

 もうそれは実にかなりしんどいことです。

 ただでさえ努力量を増やしているのにそれが成果として実感できず、それでも前を向いてやり続けないといけないわけですからね。

 

 努力がすぐ結果になって表れ、自分自身を容易に肯定できた頃とは違って、「なぜこんなに頑張っているのに成果が出ないんだ」、「自分はやはり素質がないのか」、「超進学校の人とは持っているものが違うんじゃないのか」と自分を信じられなくなってきます。頑張っても結果が出ないし、これからさらに頑張っても結果がでないかもしれない。その不安を背負いながら、努力し続けないといけないのです。

 

 ゴールがはっきり見えていて、「これだけ頑張れば○○大に受かる」と確信できれば頑張れる人が多いでしょうが、そんな確信ができる人は多くありません。今でしょの林修先生のようにそれができて東大に行く人もいますが、そんな人は人口の0.1%もいないのではないでしょうか。。

 挑戦することのレベルが高くなればなるほど、努力が報われるとは限らなくなってきますし、これだけ頑張れば云々といった保障はありません。

 多くの人は、「頑張ってもだめかもしれない」という恐怖と戦いながら、ぼやけて見えないゴールに向かって走り続けないといけないのです。

 

 

4.私はというと

 私も偏差値60ぐらい(進研だと70ぐらい)まではそこまで苦労せずにたどり着いた印象があります。授業をまじめに聞き、休み時間や空き時間勉強し、部活が終わってからも普通に夜10時ぐらいまで勉強し続けただけであり、むしろ成績が上がるのをゲームのように楽しみながら勉強しているぐらいでした。

 しかし、そこからは難しい問題を解けるようにならないといけなくなってきて、本質部分までしっかり理解することが求められるようになってきたため、なかなか思うようには伸びませんでした(しかも、私は注意力が散漫すぎるのでミスもかなり多い)。

 

 それこそ部活を引退して狂ったほどの猛勉強をしても、伸びはわずかで結局京大は行けませんでしたし、阪大すら行けずじまいになってしまいました。

 センター試験でいうと、2年時(受験1年前)に712点(7割5分ほど、部活帰りで疲れているのに東進で無理やり受けらされた)だったのが、3年次は8割2分程度までしか上がっていません。

センター試験の時期にとある病気で高熱を出した末手術するという笑えない事態になったのは内緒。)

 

 浪人でよく伸びるのは、現役時代にまるで勉強してなかった体育会系がほとんどで、現役時代のときからめちゃくちゃ勉強していた人はそこまで伸びないですし、やはり河合塾でいう偏差値65(京大レベル)付近は魔境だと思います。

 数字だけ見れば「なんだ。京大と言えどもこんだけしか阪大と差がないやん」と思う人も多いでしょうが、その2.5ポイントとかの差がとんでもなく大きいのです。そこまでのレベルになると2.5ポイントを上げるのに1年かかったりすることも珍しくないのです。下手すると偏差値60から65は、偏差値50から60まで上げる労力とその倍近くかかるかもしれませんし、さらに65から70ともなると…

 

 

5.あまり語られないが

 受験の世界に限らずどうしても成功者の話しか表に出てきませんが、私の周りにも「現役時代に惜しくも阪大に落ちて1浪したけどまた惜しいところで落ちた」、「めちゃくちゃ頑張ったのにむしろセンターの成績が下がった」(その年によって問題難易度が変わりますし、問題との相性などもあるので実力が上がっていても点は下がることはままあります)、「中日ファンなのに名大2回も落ちた」といった人が残念ながらいます。それも1人や2人の話ではありません。

 

 惜しいところまでは行っているわけで、決して努力不足ではないでしょうし、努力の方向性や質に問題があるわけでもないと思いますが、それでも挑戦することのレベルが上がるとなかなか一筋縄には行きません。少なくても私は彼らに「努力が足りなかった」など口が裂けても言えません。

 惜しいところで落ちたなら来年は受かるだろうと普通は思うものですが、そのわずかな差を1年かけても埋められないことは珍しいことではないのです。

 むしろ司法試験なんかは、惜しい順位で落ちた人が2年目も3年目も同じぐらいの順位のままとどまり不合格になってしまうパターンが少なくないですし、偏差値65付近やそれ以上の難易度のこととなると、その領域は魔境と化すものなのです。

 

 

 世の中には、魔境に踏み込むまで頑張る人が圧倒的に少数派なので、安易に「努力は報われる」などという人が多いですが、魔境ともなるとそう簡単に努力は報われません。

 数値にして僅か1だとか2だとか2.5という差を埋めるのにとんでもない努力が必要ですし、その努力をしても魔境から撤退する羽目になることもあるのです。

 

 3000時間勉強すれば東大に受かるという人がいますが、私は2年の1月から3年の12月にかけて3300時間ぐらい勉強しても京大に受かっていません。そして、私のような人は別に珍しくないと思います(私の場合は中学以前がアレすぎる環境だったのが問題だと思いますが。)

 「俺にとってはもうちょっと上が魔境」という人は別に話を右から左へ聞き流してしまえば良いのですが、京大レベルに近づくとそこからは魔境ということを頭に入れていただきたいものです。おそらく9割5分以上の人にとっては京大レベル付近は魔境になると思います。

 

 余談ですが、魔境とか云々を意識するまでもなかったとんでもなくできる人や、魔境が何なのかも知らずボーナスステージしか知らない人が「努力は叶う」とか安易に言っているのを見ると、「何言ってんだこいつ」と常々思います。