語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

人工知能が人間の上位互換的立場になるとき、人はどう生きればよいのか

 日本ではまだまだ先のことと思って盛大な議論にはなっていませんが、スイスなどでは人工知能により雇用の大半がなくなってしまう事態に備えてベーシックインカムを導入するべきではないかという議論が行われています。

 人工知能の進歩により本格的に雇用が急減するのはまだ先のことでしょうが、30年40年50年という長いスパンで見れば、医者や弁護士などの高度専門職と言われる職を含めた多くの雇用が人工知能により代替されることになる可能性は高いでしょう。

 そういった事態が起こったとき、果たして人はどう生きればよいのでしょうか。少し考えてみたいと思います。

 

 

○労働の価値は大幅に失われる

 モデルやスポーツ選手といった人間がやってなんぼの仕事は残るでしょうが、そうでない仕事は多くが人工知能によって奪われるおそれがあります。

 今でも会計や事務については便利なソフトの登場で雇用が減っているわけですし、産業用ロボットの登場で仕事を失う人も少なからず出ているわけです(特に日本は産業用ロボットの導入数が世界トップ。05年の段階では断トツだった。)。その流れが多くの分野で大規模に進むおそれがあります。

 実際、労働人口の半分は人工知能やロボットに代替されるとの研究もあるようです。※1

 

 今の日本では、仕事をすることがアイデンティティーやステータスとなっている人が多いですが、そのアイデンティティーやステータスが奪われる人が大幅に増えるのです。

 労働力としてはもはや必要とされないわけですから、労働以外の分野に自分の価値を見出す必要性が高まるでしょう。

 

 

○労働以外でも人の存在意義が危ぶまれる

 人間は、すぐ物事を忘れますし、すぐ知識や理解があやふやになります。勝手に記憶が改ざんされることもありますし、検索機能もボロボロです。そもそも「学問なり難し。少年負い易し」という言葉があるように、知識や理解を吸収するのにもとんでもない時間がかかります。

 その点、人工知能は人間とは比べ物にならないだけの大量の情報を正確かつ迅速にインプットし、それをもとに様々なアウトプットをするわけです。人間よりも圧倒的に多くの考慮要素をバランスよく検討して妥当な解を導けるのです。

 人工知能の研究が今後どこまで発展するかにもよりますが、頭脳勝負となれば勝ち目はなくなっていくでしょう。頭脳面においては、いわば人間の上位互換が生まれるのです。

 

 高度な判断は、知識もあやふやでバイアスに充ちた存在である人間よりも人工知能に任せる方が合理性が高いわけですし、単なる労働分野を超えて様々な思想、思考、発想部分まで人工知能の方が優秀ということになるおそれがあります。

 もはや政治や行政はおろか、文学やサブカルの分野などでも人工知能がやったほうがいいじゃないかという話になっていくのではないでしょうか。

 今ですら人工知能によりつくられた作品が賞をもらうという事態が起きていますし、人工知能の方がどういった要素が受けるのかの分析を大量かつ緻密に行える分、人の心に響く作品を生み出すこともありうるのではないでしょうか。

 そんな「どこぞのSFやねん」という未来が現実になったとき、人の存在意義はどうなるのでしょうか。そこが強く問われます。

 

 

○行きつく先はユートピアか、一部の資本家の一人勝ちか

 人の存在意義が多くの分野でなくなってしまっても、人が労働しなくてよくなるだけで人の生活が豊かになるのであれば別によいかもしれません。

 労働を中心に人工知能を上手く利用して人間の役目を代替させ、人はリタイヤ生活のように楽しく人生を過ごすことに力を入れられるようになれば、それは素晴らしいことでしょう。

 人は娯楽・余暇のために生き、ストレスのない楽しい生活を送ればいいのかもしれません。

 

 しかし、産業用ロボットの浸透や、古くは工場制機械工場の浸透により社会がどうなったかをみるとそんな夢物語が実現するとはあまり思えません。

 人工知能の場合も、それを利用する資本家が巨万の富を手に入れ、その代わりに多くの労働者が雇用を失うという羽目になるおそれが強いのではないでしょうか。

 労働者が、仕事を失い、誇りも失い、存在意義を失って、数少なくなった人間だけができる仕事を奪い取るため激しい競争に身を置き続けるという悲しい事態に可能性の方が高い気もします。

 

 そんな事態になったとき、人は果たしてどう生きればよいのでしょうか。

 生きる目的を考える暇もなく、ひたすら何かにしがみついて生きることになるのでしょうか。

 

 

○さいごに

 人工知能待望論も強くありますが、今までにないぐらいのイノベーションが起こるにしても、一般人は恩恵よりデメリットの方が多いかもしれませんね。今よりさらに世界が荒廃していくおそれも強そうです。

 今の30代以上の人は大規模なパラダイムシフトが起きても貯蓄により何とか生き延びられるかもしれませんが、それ以下の世代はいったいどうなるのでしょうかね。

 とりあえず、人工知能に代替されにくい職を選ぶ、人工知能に代替されてクビになっても生活できるようにスキルを身に着け貯蓄を増やしておくのが無難かもしれません。

 

 

※1: 日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に | 野村総合研究所(NRI)

 

 

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