語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

何かがおかしい法科大学院の教育

 法科大学院については様々な批判が浴びせられており、韓国からも「日本の法科大学院制度は失敗」と言われて反面教師にされるという惨状となっています。

 その中でも、特に私が法科大学院に入って「これはおかしくないか」と思った部分について少しばかり語りたいと思います。

 

 

○司法試験に受からなければ意味がないのに、受験教育は禁止

 法科大学院ではいわゆる受験教育が嫌悪されており、表向きには受験教育は禁止となっています。

 一応講義において答案の書き方を教えたり答案の添削をしたりする場合もあるのですが、受験とはあまり関係ない学術的な部分ばかり教える講義も少なくないですし、苦労して講義についていってもあまり司法試験合格には必要ない知識や理解しか得られないことが少なくありません。

 

 結局、どのように答案を書けばいいのか、どう問題を解いていけばいいのかといった司法試験に合格するために必要となる知識や理解は予備校を利用しないといけないことになっています。

 それどころか、本来であれば司法試験の合格のために必要な基本的な判例の規範や言い回しをしっかり勉強し、基本的なところを迅速かつ正確に書けるようにする訓練をするべきなのに、学術的な難解な事項の理解時間を奪われてそのような訓練がおそろかになりがちです。

 

 司法試験に受かって法曹になってなんぼというのに、法科大学院の教育にどっぷりつかってしまうとむしろ司法試験合格が遠のいてしまうのです。

 

 

○見かけの合格率を上げるために期末試験を難しくし、さらに合格が遠のく負のスパイラル

 法科大学院は司法試験合格率でランク付けされるところがありますし、実際に補助金の交付額も合格率によって変動します。

法科大学院4校、初の補助金ゼロ 給与分、実績と連動へ:朝日新聞デジタル

 そのため、特に合格率の低い未修で顕著なのですが、期末試験の単位認定を難しくて、司法試験にとても合格できなさそうな人は留年とし、司法試験を受けさせないように仕向ける法科大学院が少なくありません。少しでも合格率を上げるため法科大学院も生き残りに必死なのです。

 

 しかし、法科大学院の教授は学者なので、試験を難しくするにしても司法試験の傾向とは違うところで難しくするところがあります。

 その結果、期末試験の勉強に力を入れすぎて司法試験の勉強に力を入れづらくなり(法科大学院では必修科目が極めて多く、それを落とすとそもそも修了できず司法試験を受けられない)、合格できそうな人まで受からなくなる羽目になりがちなのです。

 そして、さらに合格率が落ちたことに危機感を覚えて、さらに単位認定を厳しくするという負のスパイラルに陥っている法科大学院がいくつかあります。

 

 具体的な名前を出すと、神戸大学千葉大学のような定評のあるはずの法科大学院ですら一時期未修の合格率が悲惨なことになっていました。平成26年度では神戸未修が45人中4人、千葉未修が25人中1人しか合格していません。また、早稲田も現在ではそのパターンに陥っていると予備校の講師が警鐘を鳴らしている状態です。

法務省:平成26年司法試験の結果について

 

 私の在籍していたローもそのパターンでして、一時期留年・退学率は3割を超えました。「見かけの合格率ばかり気にして、合格できそうな人まで不合格にしてどうするねん」という話ですが、閉鎖社会ですし、そういうおかしいことがまかり通っているのです。

 ギリギリで不合格だった人なんかは、法科大学院の教育や方針次第では効率的な学習が妨げられずに合格できていたのではないかと思えてなりません。

 

 

○受かった後は役立つという教育もあるが…

  法科大学院では実務的な学習もそこそこ行われますが、中には司法試験に合格したときには役立つんだろうなと思うような素晴らしい講義もありました。

 しかし、いくら受かった後に役立つ素晴らしい教育をしていても、合格できなければその教育を受けて頑張った経験は活かされません。ただの税金の無駄遣いになってしまいます。

 

 最終的には8割以上の人が合格する有名ローの既修であれば別によいのですが、全体を見れば最終合格率は5割程度しかないですし、有名でない法科大学院かつ未修ともなると結局合格できない人の方が多いわけです。

 それでもほとんどの人が合格するという前提の下、多額の税金を費やすだけの意味が本当にあるのでしょうか。昔みたいに司法修習でじっくり教育をするほうが、ロスが少なくて済むのではないでしょうか。

  

 

○司法試験以外の選択肢は個人にまかせっきり

 法科大学院は司法試験に合格し法曹となることを目標として設立されたものであり、まずは司法試験におけるサポートが主になるのは仕方がないでしょう。

 しかし、合格率が凄く低い法科大学院では最終的に合格できない人が多いわけですし、現実を見れば法曹以外の進路を強く支援するべきではないでしょうか。

 

 現状では、多くの法科大学院は法曹以外の進路となると、「知ったこっちゃない」と見て見ぬふりですし、企業の説明会を開いてくれるような良心的なところはあまりないわけですが、その大学を信じて2年から3年自分の人生をかけてくれた人に対してあまりに真摯でない対応ではないかと思います。

 多くの人は安くない授業料も払っているわけですし(私は全額免除なので一銭も払っていませんが)、ダメならダメで最後まで面倒をみるべきではないでしょうか。

 

 

 私としてはとうに過ぎた問題ですが、思い返してみてもおかしな点は多いです。

 私の周りには「むしろローにいる間に実力が下がった気までする」という話をする人もいますし、これから司法試験を目指す方は「予備試験、それが無理なら有名ロー既修、それも無理ならきっぱり諦める」といったようにできる限り法科大学院に在籍しないようにすることが大事ではないかと思います。

 あともっと国民は「税金の無駄遣い!」と言って法科大学院を糾弾して良いと思います。