火災への恐怖心、警戒心が年々薄れていっている気がする
先日、明治神宮外苑のイベントで火災が発生し子供が一人なくなるという痛ましい事故が発生し、大きな話題となっています。
今回の事故は、素人が見ても発火のおそれが大きく一気にも燃え上がる危険が強い構造をしていたことから、火災への警戒心の弱さが事故を招いた大きな原因と考えられますが、ふと「火災への恐怖心や警戒心って昔に比べてだいぶ弱まったのでないか」と思ったのでその話をしたいと思います。
○20年ぐらい前はもっと火災を恐れていた気がする
今でも火災は人々の脅威であり、危険なものとして警戒されていますが、私が小学生やそれより小さかった時のことを思い出すと、人々はもっと火災を恐れていて火災を警戒していたように感じます。
「火災だけはアカン、気を付けろ」という風潮が今よりも強くあったと思いますし、ストーブで必ず火が消えたか確認しろ、ガスの元栓をちゃんと閉めろなどとかなり強く言われたものです。
大人たちの火災を生じさせない意識はすごく強かった気がします。
○火災に関する環境の変化が意識の変化につながった?
それなのに今では昔ほどは火災への警戒心がなくなった、なぜだろうと考えましたが、おそらく環境面の変化が大きいでしょう。
というのも、20年ぐらい前はまだ石油ストーブが数多く普及していましたが、今は電気ストーブがとんでもなく増えており、比較的火災の危険は小さくなっています。
コンロについてもIHが浸透し、これまた直接火を使わないため火災の危険を小さくすることに成功しています。
それに住宅のことを考えても、耐火性能の高い建物は増えましたし、火災警報器の設置が2006年に義務化したこともあって、仮に火が発生しても大規模になる前に沈静化しやすくなりました。
あとは喫煙率が低下して、火災を生じさせる原因となるものが減ったからというの結構大きいかもしれません。
実際、火事による被害数を見てみると、やはり昔より少なくなっており、平成16年度に6万387件あったのが、平成26年には4万3,741件まで火災の数が減っているため、20年と言わず10年で状況はかなり改善されました。
第1章 災害の現況と課題|第1節 火災予防|[火災の現況と最近の動向]
要するに、火災を生じさせる原因となるものが減り、火災の発生数が昔に比べ減ったことから、自然と火災への意識が減り恐怖心や警戒心も減っていったのではないかと思われます。
○昔の悲劇が昔すぎて重く受け止められなくなった?
災害というものはどうしても年を追うごとに警戒心が弱まってしまうものであり、過去の災害の体験や教訓を後世に伝えることがすごく重要なわけですが、衝撃的な事故や事件も時間が経てば印象に残らなくなるものです。
火災についても、過去にはとんでもない惨状となった大規模な事故がいくつもあり、その分昔の人は火災への意識が高かったものの、今ではすっかり惨状を忘れてしまった感があると思います。そこらへんが今と昔の恐怖心や警戒心の強さの違いを生んでいるのではないでしょうか。
例えば、昭和の出来事を考えてみると、桜木町の列車火災、千日前デパート火災、大洋デパート火災、川治プリンスホテル火災、永田町のホテルニュージャパン火災など大規模で長く人々の記憶に残り語り継がれる火災被害は度々生じていましたし、そこまで大規模なものでなくても身近に火災は発生していました。
それ以前についても、日本では木造建築が多かったこともあり、長らく日本人は火災との戦いを強いられていました。戦時中は焼夷弾による被害が非常に多かったですし、江戸時代までさかのぼれば明暦の大火や明和の大火など頻繁に大火が発生し多くの損害を出し多くの悲しみに包まれてきた歴史があります。
そういうこともあって、昭和や平成の最初のころまで、長らく火災の恐怖、警戒が残り続けたのでしょう。
そこが今とは恐怖心や警戒心の強さの違いになっている気がします。
○あまり身近でなくなっただけで、当然今でも火災は怖いまま
今では火災の被害がだいぶ減り、人々は火災の恐怖が薄れた時代で暮らしており、若い世代を中心に、火災が生じるのではないかという意識や危惧感が薄れているように思われますが、時代が変わっても火災が危険なことに変わりはありません。
一酸化炭素で簡単に人は死ねますし、やけどの苦痛はすさまじいですし、焼死はもっともむごい死に方と言われています。
あまり身近さがなくなり恐怖や警戒しなくなったとはいえ、危険なものは危険と思い、警戒心をしっかり持たないといけないと今回の事故で改めて考えさせられました。いやいや動画は見るものじゃないですね。