語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

女子学生だけに家賃補助を出すことが許されるべきか

 普段は東大を素直に称賛するコメントが多い当ブログですが、そんなブログを書いている私からしても、「アホちゃうか」、「何堂々と差別してるねん」と思うような取り組みを東大が導入したので、その件について思うことを書き散らしたいと思います。


 

○普通に違憲性の問題があるだろう

 性別は、人が社会において一時的でなく占めている地位で、自分の力ではそれから脱却できないものであり(例外として性別変更の制度があるが、性同一性障害者のうち性別適合手術(保険適用外)をした者しか認められないので通常は自力で変更できない)、そういった自分ではどうしようもない要素によって差別されることは現代社会で許されてはなりません。そのために憲法14条1項で性別による差別をはっきり禁止しているのです。

 そういうことを考えると、性別による扱いの差異の問題は、厳格な審査基準で違憲性を判断する必要があるでしょう。

 

 今回の補助の目的は安全な住まいの提供による志願者増のようですが、あえて女子の志願者を増やすべき理由があるのでしょうか。

 別に女子に限らず志の高い人の志願者を増やせばよいのではないでしょうか。

 それに多様性の確保と言うなら、東大合格者の少ない地域の人や(東大京大出身者の割合は最高の県と最低の県で40倍もの差異があるし、東大出身者の約6割ほどが関東出身、3割近くが東京出身であるため地域による差異があまりに大きい※1)、東大合格者の少ない低所得の家庭出身者(世帯年収450万円は13%ほどしかいない※2)に対して経済的な支障をなくし、東大を志願させ、地方民の観点や低所得者の観点を取り入れて多様性を確保すべきではないでしょうか。あえて女子に限定して志願者を増やすべき必要性がどれだけあるのか怪しいです。

 こういうことを考えていくと、やむに已まれぬほどの目的があるとは言い難いのではないでしょうか。

 

 仮に目的がやむに已まれぬものと言えたとしても、やはり女子だけに対象を限定するという手段を取る必要があるのかは怪しいです。

 勿論、女子は男子に比べて痴漢など犯罪被害に遭いやすいという特徴はありますが、そうはいっても男子だっておかしい人に絡まれる恐れが十分にありますし、所詮は程度がやや違うだけで男子にとっても安全な住まいの提供は当然大事です。男女の違いを考慮して求められる安全性が変わると考えたとしても、せめて女子に3万円、男子に2万5千円を補助するという形にするべきでしょう。

 それに、所得制限を設けないというのはやはり不可思議です。お金がなくて東大受験を断念するのを避けようというなら、裕福な家庭の女子には補助をする必要などないでしょう。大学以外にも安全性の高いマンションなどいくらでもありますし、裕福な家庭出身者ならそこと契約すればいいだけの話です。

 そんなことを考えると、女子だけに所得制限なく補助をするというのは目的達成のため必要不可欠の手段とはいえないのではないでしょうか。

 

 私は学者ではないのであまり偉そうなことは言えませんが、今回の補助は性別によって合理的でない扱いの差異を設けるものであるとして憲法14条1項に違反するおそれまであるでしょう。

 そんな重大な問題のある政策を平然と行うべきではないに決まっています。

 

 

○天下の東大ですら「多様性確保=女性活用」の発想しかないのか

  今回の家賃補助は、女子学生の志願者増を目的としていますが、何故女子の志願者を増やすかと言うと多様性確保が理由のようです。

 しかし、下の記事で書いているように多様性確保=女性活用とは限りません。

 ただ性別が女なだけの人を増やすよりも、もっと多様性確保としてより良い手段があるのではないでしょうか。それなのに東大ですら安易に多様性確保=女性活用と考えているように思えてしまうのが残念です。

 

 特に東大の場合、上でも少し述べましたが、入学者の関東出身者・高所得の家庭出身者の割合がすごく高いです。

 私は関西出身ですが、関西人だと東京で暮らすお金がないから、東大に行けそうでも京大を目指すパターンが実に多いです(勿論、問題の傾向や合格確実性も考慮しているのでしょうが。)。※3

 統計を見ても、大阪、京都、奈良、兵庫の公立高校の進路先としては圧倒的に京大比率が高く、東大にはほとんど進学していないのがわかりますし、別に私の周りに限った話ではなく関西には広くそういう傾向があるのでしょう。

 

 多様性確保と言うのなら、東大受験を断念することがないよう地方民や低所得者層を救済し、地方出身者や低所得者の観点を取り入れることで多様性を図るべきでないでしょうか。何故女子だけで多様性確保を図るんだという話です。

 

 

○そもそも多様性はそれほど必要なのか

 多様性多様性と言いますが、そもそも多様性がどれだけ必要なのかも怪しいでしょう。

 多くの研究では性別などまるで関係ないでしょうし、だいたい研究の分野に男だ女だを持ち出すのはナンセンスです。男か女かなんて特に意味を持たないことがほとんどでしょう。

 

 女性目線が必要になるものなどほとんどないでしょうし、もしあったとしても現在でも20%いる女子や女性的な思考をする男子の存在で事足りるのではないでしょうか。

 それに伊藤忠の現社長岡藤正広氏のように妻の意見を取り入れて女性の英知を利用する手法だって取れるわけですし、性別が男性だからと言って女性目線を取り入れられないわけではありません。

 

 

だいたい女子比率が低いのは金の問題じゃない

 今時女だから大学に行くお金を出さないなんてことはほとんどないでしょうし、事実進学率も男女でそれほど大きな差があるわけではありません(ド田舎ならまだ女子冷遇が残っているところもあるかもしれないが、そんなところではそもそも東大にまで行ける人はほとんどいないから東大の女子比率にはほぼ影響していないだろう。)。

 経済面で女子が割を受けているから、東大の女子比率が低いという側面はあまりないでしょう。

 

 それよりも問題は親の意識や社会の風潮、社会構造でしょう。

 というのも、男子については「男は稼いでなんぼ。仕事で活躍してなんぼ。やからしっかり勉強してよい大学に行かなアカン」という観念があります。

 親も教師も男子に対しては厳しく教育するし、そういう観念を受け止めて男子側も自分が社会で価値ある人間になろうと必死に勉強するものです。

 私も周りを見ていて常々思いますが、人生を懸けて必死に勉強するような人はだいたい男子ばかりです。

 

 それに対して、「女は別に子供産んで育てればいいし、大学もそれなりでいい。仕事もホワイトなところに行ってそれなりにやればいい」という観念があります。「女子で浪人させるのは可哀相」みたいなことを言う人もいますし、「男子なら大学受験で必死に勉強させるけど、女子にそれやらせるのは可哀相だからエスカレート式の学校に入れよう」という親も少なくないでしょう(最近だと、ナインティナインやべっちもそんな発言をしていた記憶があります。お子さん男の子だけど。)。

 そのせいでバリバリ働いても仕方ない、仕事でキャリアを積む前段階として東大に行っても仕方がないと思う女子は実に多いです。そのせいで男子に比べるとやはり死に物狂いで勉強してよい大学に行こうとする人の数は限られています。そら努力しても意味がないどころか、婚期が遅れ社会において負け組扱いされるかねないのだから、あえて最難関の東大を目指すような割に合わないことをしようと思わないでしょう。実に賢明な選択です。

 

 金銭の問題がないとは言いませんがそれは女子に限った話ではないですし、本気で大学受験に取り組んでいて東大も視野に入れられる人は男子が多いので、むしろ男子の方が金銭の問題で東大を断念するパターンが多いでしょう。

 周囲の意識、社会の風潮、バリバリ働ける選択をしづらい社会構造にこそ問題があり、そこを改善しないとどうしようもありません。

 

 あとは男子の方がとびぬけてできる人もとびぬけてできない人も多いという特性が影響しているでしょう。

 東大レベルともなるとやはり努力だけではいかんともしがたい側面が大きいので、元々の能力の高さの面で東大に入れるだけの頭脳をもった人には男子の方が多いというところがあります。

 東大ぐらいの難易度ともなると、男子の比率が高まってしまうのはやむを得ないのです。

 

 

○さいごに

 自分自身が非関東出身で貧乏人であり、周りにも東大に行けそうなのに金銭的な理由から京大を目指す人が少なくなかった身としては、女子だけじゃなく地方民全体、低所得家庭出身者全体に補助を出せよと強く思います。そちらの方が広く国民に機会の平等を保障できますし、公平性があります。

 

 一応、東大はすでに年収400万円以下の家庭出身者については学費免除の策を取っていて、一定程度低所得家庭出身には配慮しているのですが、学費免除になっても生活費負担が重すぎるのでまだまだ足りないんですよね。

 強引にまとめると、女子以外にも金に困っている人には補助を出せということです。 

 

 

※1:データえっせい: 東大生の出身地域の偏り

※2:東大生の親の年収|年収ガイド

※3:私はそもそも東大を目指せるスペックがまるでありませんでしたが、学部を選ばなければ慶応や早稲田に受かるだけの頭脳が当時はあったので(さすがに法学部は受かるか怪しい)、関東出身であればそもそも国立を目指すこともなく慶応か早稲田に進学していたと思います。はっきり言って金銭面の問題で慶応や早稲田を断念しています。こんな感じの人は地方にはいっぱいいるでしょう。