語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

カジノが解禁されるとして、日本でカジノは成功するのだろうか

 カジノを含むIR・統合型リゾート施設の整備を推進する法案をめぐり自民党の国会運営が批判されていますが、同法案は近々成立しようとしており、近い将来日本でもカジノが解禁される見込みとなってきました。

 しかし、個人的には日本でカジノを解禁してもあまり上手くいくと思っていないですし、よく言われるメリットも実際にはそれほど生じないのでないかと思っているので、カジノが成功しなさそうな理由について語りたいと思います。

 

 

○世界的に見てカジノ業界は過当競争、供給が既に多い

 世界では既に130か国ほどでカジノが合法化されており、ラスベガス、アトランティックシティ、マカオなどを中心に数多くカジノが存在しています。

 アジアにもマカオはもちろんのこと、シンガポール、マレーシア、韓国、フィリピン、カンボジアとカジノは存在しており、カジノ業界はすでに過当競争の気配が強いのです。

 

 実際、カジノの都市としてとくに有名なアトランティックシティでも、過当競争によりカジノの閉鎖が相次いでいますし※1、世界単位で客の奪い合いが発生しているため、日本でカジノを開いても当然のように外国人観光客が集まることは期待できません。

 特に日本は立地の都合上、中国や韓国、台湾といった東アジア以外からの観光客を獲得しにくい環境にありますし、日本語が公用語であり英語が通用しにくいという問題があることからすると、カジノをしたい人がわざわざ日本に来ることは期待しづらいのではないでしょうか。

 海運のシェアが上海や釜山に奪われ、航空のシェアが仁川国際空港に奪われているのと同じように、カジノの顧客も他国に流れてしまう可能性が高いと思います。過当競争下で勝ち抜き生き残るのは容易でないでしょう。

 

 

○観光産業の競争も激しい

 カジノといっても本当にカジノだけで顧客を獲得しようとしているわけではなく、多くのカジノのある都市はリゾート施設もセットにして観光地として顧客を獲得しようとしています。

 日本でも大阪や横浜がカジノ誘致を検討しており、当然観光地として売り出しにかけているところも強いですが、日本にはすでに多くの観光都市があるわけで必然的にそことも顧客の奪い合いになります。

 

 日本に来る外国人観光客に人気なのは京都の街並みのような古来の日本文化を味わえる観光地でしょうし、既存の観光地との競争にカジノが勝てるかと言うとかなり怪しいのではないでしょうか。

 

 

国内需要がどれだけあるかも怪しい

 日本では競馬、競輪、競艇、宝くじと公的ギャンブルが既に数多く存在し、浸透しています。

 それに事実上のギャンブルであるパチンコも芦屋市を除けば日本各地いたるところに存在しています。

 

 パチンコの売り上げは年間19兆4000億円で、マカオのカジノの売上2兆6800億円、ラスベガスのカジノの年間売上5280億円(2011年レジャー白書)を遥かに上回っていますし、既に日本は世界トップのギャンブル大国なのです。

 ギャンブルに有り触れた日本で、今さらギャンブルの一つであるカジノを追加してもさほど需要はないのではないでしょうか。

 

 それに日本では、カラオケ大手のシダックスすら過当競争に伴う価格競争に勝てずカラオケ事業から撤退する羽目になっていますし、娯楽施設やレジャー施設も飽和状態にあります。ゲーセンも潰れすぎだぞ。どうにかしろ!

 ギャンブルも、その代替となるだろう娯楽やレジャーも過当競争状態なわけであり、そこにさらに観光産業も関わってくるわけですが、時間もお金も有限です。日本人は日本のカジノにそれほどお金を回せられないのではないでしょうか。

 

 今の10代や20代なんかは特にカジノには目もくれず、「それならまだソシャゲに課金するわ」と言う人が多い気がしてならないです。

 

 

 一応、予想経済効果は大阪約7500億円、横浜約4000億円らしいですが、私としては上の理由からそこまでの効果が実際に生じるのか疑問に思っています。

 もしカジノ側が様々な競争に勝って上の経済効果が生じたとしても、それはそれで他の日本のギャンブル・娯楽・レジャー・観光産業の収益が減るので、日本全体としてみると利益は大して増えないおそれが強いと思います。
 結局、ギャンブル依存症の人を今以上に増やし、治安を悪化させただけで国内トータルの利益は大して上がらないとなれば、果たして国及び社会にとって成功と言えるのでしょうか。

 

 あと、シンガポールではカジノ建設により6万人の雇用創出につながったようですが、ギャンブルも娯楽も氾濫している日本で同じように雇用をつくれるとは思えませんし、カジノで雇用が出来ればその分パチンコなどの雇用が消えるのではないでしょうか。

 それに、雇用創出と言うなら、治安悪化などの不安のない公共事業をやったほうがマシなのではないかと思います。

 

 

※1:カジノ閉鎖続くアトランティックシティー、雇用や税収にも打撃 - WSJ