語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

法律と同等かそれ以上に守らなければならない規範

 昔に比べると現在では、「法律は守らないといけない」という意識が一応国民に根強くなってきたと思われる。

 飲酒運転はかなり減ってきたし、盗みがいけない・人を傷付けてはいけないという意識は強まっているだろう。

 

 さらに、善良な市民にとっては、「法律を守らないといけない」という規範から類推解釈をして、「法律以外でも大事なことは守らないといけない」という規範を導き出すのが普通だろう。

 元々法律というのは、人がしてはならない規範を法的拘束力を持って規定したものであり、法律以外にも法的拘束力がないだけで強く批判されるべき行為は当然ある。そういう行為は法的拘束力をもってないだけで、やはりしてはならないし、守るべきことは守らないといけないのだ。

 

 

 こんないちいち難しいことを言うまでもなく、「法律以外でも大事なルールは守らなければいけない」、「法律にないからといって好き勝手人の迷惑になることをしてはならない」ということは小学生でもわかることのはずである。

(絶対禁止なのか、できるだけ禁止なのかなど程度の差こそあるが。)

 

 しかし、残念ながら世の中には頭がよくなかったり、あくどいことをしたり人もいるようであり、「法律以外は守らなくていい」という誤った規範を導き出してしまう人も存在してしまっているのが実情だ。

 

 

 今日は、そのあくどいことをした人の一人である舛添知事について辞職が決定した。

headlines.yahoo.co.jp

 不適切な政治資金支出をしていたというのが辞職の原因である。

 このことが辞職まですべき原因になるかならないかは、意見が分かれるところかもしれないが、辞職は当然という意見が大半だろうし、当然とまでは行かなくてもやむを得ないという意見が多いだろう。

 私自身は、後述の理由から、辞職は当然という意見である。

 

 

○知事は、法律並に重要な規範に反してしまった。

 世間では、法律ばかり守らないといけないと言われがちであるが、法律がなくても「人を馬鹿にしてはいけない」「人の迷惑にならないようたばこは吸わなければならない」などの規範が世の中にはいっぱいある。

 その中には、法的拘束力こそないものの、道義的社会的に法律と同等かそれ以上に守らなければいけない規範もあるわけだ。

 そんな重要な規範に反する行為は他社及び社会にとって迷惑極まりないし、行為の悪質性・与える損害の大きさを考えると、明確に法律に違反するのと同等に糾弾されるのも当然なのである。

 「法律があるから守らなければならず、守らないと糾弾される」、「法律がないから守らなくていいし、当然糾弾もされない」という単純な構造ではないのだ。※1

 

 そして、「知事は都民の金を私的に悪用してはならない」というのはまさにそういう重要な規範であろう。

 知事は、都民の利益のために活動することが求められており、都民が懸命に働いて収めた金を自分のために濫用することは、道義的社会的に絶対に許されない。そんなことが許されたら、政治は私物化され腐敗してしまう。そのため、法律にはなくとも法律と同等レベルに強く禁止されるのである。

 だから、重要な規範に反した知事が批判され、辞任に追い込まれるのは至極妥当な結論なのである。

 

 世の中には、↓のように「違法行為でないのに批判するのはおかしい」というわけのわからないことを言う人もいるが※2、法律になくとも、知事が私的にやりたい放題政治資金を利用することは当然許されてはならない。

zasshi.news.yahoo.co.jp

 違法でなくても、市民のために行動し市民の生活をよくすることを使命とする知事の職務からすれば、元々は市民から徴収した金を私的に濫用するなんてことは絶対にやってはいけないレベルのことなのだ。

 それだけのことをしたのだから、当然批判はされるし辞任という話にもなる。

 

 

○資質に欠けるし、信頼が崩壊してしまったのに知事を任せられない

 おまけとして考えてみると、会社の取締役だって違法なことをしていなくても、株主から資質に欠けると疑われたり信頼できないとされたりすれば、当然辞任という話になる。

 知事も、知事としての資質を欠き、市民からの信頼を失えば辞任やむなしとなるだろう。

 

 ただ何もしなくてもそうなのに、ましてや舛添知事はやってはいけない不適切な行為まで行っている。

 支出した政治資金の額、あまりに不適切と言いようがない用途、記憶にないを連呼するなど都民への適切な説明をしようとする意思の欠如などのことを考えると、知事としての資質は疑わざるを得ないし、都民の信頼は完全に崩壊している。

 そういう観点からしても、辞任は極めて妥当であるだろう。

 

 

 今回述べた通り、法律以外でも強く守らないといけない規範はある。

 法律にないこと、ルールに書いていないことでも守るべきことは守らないといけないのです。

 法律さえ守っていればそれでいいわけではないのです。知事は勿論のこと、市民もそのことを心に置き留めておかなければならない。

 

 

※1:正当防衛や緊急避難の場合などは、法律があっても例外的に規範を守らなくていい場合に当たる。

 また、地面に落ちている10円を拾って自分の物にしたとしても、重大性の低さを考えればそこまで糾弾する行為ではないし、「他人の落とした10円玉を自分の物にするな」という規範もさほど重要なものではない。

※2:「他の政治家も不適切な使い方をしているじゃないか」ということを知事を批判してはいけない理由らしいが、他の人間が不適切な行為をしているからといって、自分も不適切な行為をしていいわけがないのは明らかである。