語られない闇を語る

司法試験、大学受験、労働問題、社会問題などを中心に、あまり語られていない・語りつくされていない闇について語っていこうと思います。苦難と失敗から得た知見を曝け出していく予定です。

企業という現代の日本の無法地帯

 無法地帯と聞くと、紛争の続いている国や、治安の悪い発展途上国イスラム国が支配する地域などを連想する人が多いと思う。

 しかし、そう簡単に命や財産を奪われないだけで、今の日本にも無法地帯的な場所がないだろうか。

 そしてなぜかそのことがあまり問題視されなかったり、問題が放置されたままだったりしないだろうか。

 

 そう労働分野である。そこで、今回は企業という現代の日本に残る無法地帯の一つについて語りたいと思う。

 

 

1.無法地帯とは

 無法地帯とは、法律や行政の及ばない地域のことをいう。

 現在の日本では、どこであっても法律や行政は及ぶものとされているため、存在しないことになっている(実効支配されている竹島北方領土については怪しいが。)。

 しかし、事実上法的な解決が図られなかったり、法的救済や行政による救済が困難だったりする場合、形式的には無法地帯でなくても、実質的な無法地帯のようなものであろう。

 

 

2.法令違反のある企業があまりに多すぎる

 その実質的な無法地域としては、まず企業が挙げられるだろう。

 むしろ違法行為が行われていない企業の方が少数派であり、法令違反の見つからなかった企業は僅か2割にすぎない。

 

 いくら素晴らしい法律があっても、それが守られていなければ何の意味もなく、まさに絵に描いた餅なのだが、8割の企業は絵に描いた餅状態なのである。

  この記事を読んでいる方も、名ばかり管理職サービス残業パワハラセクハラ等を目にした方はさほど珍しくなく、むしろ日常茶飯事という方も多いのではないかと思われる。あまりに多くの違法行為が行われ、放置されてきているのだ。

 

 

3.よほどのことがない限り企業に重大な制裁はかせられない

 法令違反があっても軽微にすぎず、さほど労働者の生命・身体・財産に悪影響を与えないのであればまだマシである。

 しかし、実際には生命をも脅かすほどの重大な事態があっても、書類送検や企業名発表という強力な手段を取られることは少ないのが現状である。

 

 男性労働者の約5%は生命の危険も高まる月100時間以上の労働をしているが、これほどの長時間労働でも日本では当たり前すぎて話題にもならず、企業側に制裁が加えられることはまずない。

 下の例も41件もの是正勧告が無視され、極めて悪質だったからこそようやく書類送検まで踏み切られたのであり、ここまで悪質でようやく表ざたになるのである。ここまで悪質でなければ表に出ることもなければ、解決されることもないことだってあるわけである。


 

4.裁判も簡単には起こせない、労働基準監督署も簡単には動かせない

 また、裁判を起こそうにも費用と労力の負担が大きく、サービス残業の総額がさほど大きくなければ諦めざるを得ないし、ことがそこまで重要でなかったり、証拠が十分に集められなかったりすれば労働基準監督署も積極的に動いてはくれない。

 それに、他国に比べ転職市場がさほど育っておらず、失業者への目が厳しい日本においては、労働者がそう簡単に会社を辞められない分、「どうせやめられない、反抗できないだろう」として悪質なパワハラをする人も珍しくないだろうが、生活のため耐えるしかないことも多い。さらなる嫌がらせや失業を恐れ声を上げることすらできない者も少なくないだろう。

 結局、企業側が何か問題を起こしても、泣き寝入りするしかないことも多いのである。

 

 

5.同じ労働者まで敵になる異常事態

 労働者の健康や財産に悪影響を及ぼす法令違反行為が行われても、なかなか労働者は救済されにくいのが現状であるが、それどころか今の日本では救済を受けられないことに声を上げても「そんなろくでもない会社に入った自己責任」、「嫌ならやめればいい。代わりはいくらでもいる。」と労働者の味方であるべき労働者がむしろ敵となり、経営者の犬になることも多い。

 

 ネットでもそうであるが、何故か問題を起こしている経営者側を擁護するコメントが少なくない。労働者側が「余計なことをするな」と経営者側に立つことだって珍しくないのである。

 費用や労力、立証の困難性、経営者の圧力だけでなく、同じ労働者の無言の圧力まであるわけだ。

 法令違反行為があっても、それに声を上げ改善することが困難な状況が存在してしまっている。

 

 

 法令違反がありふれており、重大な違反も見過ごされ、救済を受けることができないどころか救済を受けよう・状況を改善しようとすることすら難しいことも珍しくない。

 いくら法律があり行政があるとしても、その法律が守られず行政を活用できなければ何の意味もないし、もはや無法地帯と言ってしまっても差支えがないと思う。

 

 日本はどうして労働分野に関してはこうも酷い状態になってしまったのかと誰もが思ってそうだが、変えるに変えられないのが悲しいところである。

 「バカンスのある先進国に生まれたかった」と嘆く全国の労働者が救済されるのはいつになるのだろうか。

 

 

 しかし、他国との夏季休暇の日数を見ていると、日本の男性の幸福度がやたら低い理由がすぐわかりますね…

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